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実家のベランダ [日記]

私の実家のベランダからはいつも富士山が見えます。その人は実家にくると、2階のベランダに出るのが好きでした。そして、言います。

その人「ちょっとこっちきて、小鳥がいるよ」

私がベランダに出て行くと、エサ台でついばんでいた小鳥が飛びたちます。

その人「あ、いっちゃった」

母がここにミカンの皮などをおいておくのです。すると、かわいい小鳥がきます。よくやってくるのは、白くて人なつっこい小鳥でした。

その人はあたりを見まわします。

近くに大きな建物がないので、三百六十度の景色が見わたせます。そして、残念そうに言います。

その人「また富士山見えないよ」

きのうとおなじような雲。地平線から上にむかって富士山をかくしていました。でも、今日の雲は上にいくほどだんだんうすれて、空の青とぼんやりまざりあって乳青色に光っています。

その人「オレがくるとき、いつも見えないね」

ほんとにいつもそうでした。期待をこめて私もなぐさめます。

私「なんどか来てれば見えるよ、きっと」
 
でも、その人はそれからなんどか来ることもなく、実家で富士山をながめることはできませんでした。




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共通テーマ:日記・雑感

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